2 為政第二 19

Last-modified: Tue, 08 Jun 2021 11:18:39 JST (1060d)
Top > 2 為政第二 19

☆ 為政第二 十九章

 

 哀公問曰 何爲則民服 孔子對曰 舉直錯諸枉 則民服 舉枉錯諸直 則民不服

 

 哀公(あいこう)問ひて曰く、何を為(な)さば則(すなは)ち民(たみ)服(ふく)せん。孔子対(こた)へて曰く、直(なほ)きを挙(あ)げて諸(これ)を枉(まが)れるに錯(お)けば、則ち民服す。枉れるを挙げて諸(これ)を直きに錯けば、則ち民服せず。

 

☆ 意訳 (心理屋の勝手解釈)

 孔子の祖国魯(ろ)の国の王様である哀公(あいこう)が質問なさいました。

 何を如何(どう)すれば臣民(しんみん)達は私の言うことを聞いてくれるのだろうか。  先生はそれに応えて言われました。

 何枚もの木の板を想像してみて下さい。それらの板は乱雑に放置されていたために、皆歪(ゆが)んでおります。それらの板を取り敢(あ)えず揃(そろ)えて重ねて置いて、その上に真っ直ぐな綺麗な重い板を置きます。暫(しぱら)くそうして置いておくと、歪んでいた板は綺麗に真っ直ぐになっていきます。

 真っ直ぐな板というのは、礼に叶(かな)った正しい行いを意味します。歪(ゆが)んだ板は、秩序も約束も守らず好き勝手をして迷惑をかける行為を意味します。

 そして下の板が臣民で、上の板が為政者です。上の板が、下から尊敬され納得されるような行動がとれたならば、罰しなくても監視強制しなくても、臣民は自(みずか)ら進んで上を敬い、素直に言うことを聞いてくれるようになるのです。

 反対に、下がどんなに真っ直ぐな良い板であっても、上に乗る板が歪んでいたのでは、下の板も歪んでしまいます。すなわち、臣民達は上を恨んで、言うことを聞かなくなるのです。

 (本当は、王様が礼と義に叶った不動の立派な態度で臣下に臨(のぞ)めば、大夫(たいふ)達上の臣も真っ直ぐになり、それによって臣民も皆安心して素直に従ってくれるようになるのですが、それはまあ取り敢えず置いておいて、)為政者達が臣民に尊敬されるような行動をとるか、そのような立派な者を為政者として民の上に置くようにすれば、臣民は王様の言う通りに動いてくれるようになります。

 

☆ 補足の独言

 孔子は本当は王様が確(しっか)りと自分を律(りっ)しなければならない、と言いたかったでしょう。それが一番正しいことですから。しかしこの脆弱(ぜいじゃく)な王様にそれを伝えても、何の役にも立たないことは明瞭(はっきり)解ります。いやそれどころか腹を立てて拒絶をしたり、できないことを言われて更(さら)に落ち込んでしまったり、という事態も有り得ます。それでこの王様に役立つように、という心遣いからこのような一般論的譬えで以て優しく言い聞かせたのだと思います。しかし当時の歴史書の記録から推し量ってみると、哀公はこれすら実行できなかった可能性が大きいようです。孔子もそれは解っていたのでしょうね。