2 為政第二 20

Last-modified: Tue, 08 Jun 2021 11:21:05 JST (1060d)
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☆ 為政第二 二十章

 

 季康子問 使民敬忠以勸 如之何 子曰 臨之以莊則敬 孝慈則忠 舉善而教不能則勸

 

 季康子(きかうし)問ふ。民をして敬(けい)忠(ちゅう)にして、以(もっ)て勧(すす)ましむること、之(これ)を如何(いか)にせん。子曰く。之に臨(のぞ)むに荘(さう)を以てすれば則ち敬す。孝(かう)慈(じ)なれば則ち忠あり。善(ぜん)を挙(あ)げて不能(ふのう)を教(をし)ふれば則ち勧(すす)む。

 

☆ 意訳 (心理屋の勝手解釈)

 魯の国の家老である季康子(きこうし)が、自分の領土の民が言うことを聞かないことに手を焼いて、先生に虫の良い相談をしました。

 民が私を尊敬して忠実に従(したが)って、仕事に励(はげ)むようにするには如何(どう)すれば宜(よろ)しいのでしょうか。

 先生は言われました。

 上の者には影響力があります。下の者は何時でも上を真似(まね)ています。丁度、子が親のする通りをするように。このことが理解できれば、如何すれば良いか解りますね。貴方が我儘(わがまま)をすれば民も我儘をします。貴方が怠(なま)ければ民も怠けます。

 先づ第一に心掛けることは、自分の言動が荘重であること、です。貴方の存在に重みがなければなりません。そのためには、言葉に嘘がないこと、有言実行ですね。それから行動に信頼が置けること。これらができていて、皆が「流石(さすが)は御領主様だ」と頼れる安定した態度ができていれば、民は貴方を尊敬してくれます。

 そして貴方自身が家の中では親を敬い皆に慈(いつく)しみを施(ほどこ)していれば、民はそのような貴方を見て、心から忠誠を尽(つく)したいと思ってくれるでしょう。

 その上で、民が喜んで自(みずか)ら働こうという気持になってくれるためには、次の二点が必要です。

 第一は、善き人を抜擢(ばってき)して皆の上に置くことです。能力的に高いことも必要ですが、加えてそれ以上に、人格がより優れている人を選ばねばなりません。皆が信頼してついていける人を上に置けば、皆も納得して、自分も抜擢されるように頑張ろう、と努力する気持がおこります。

 そして第二に、中にはその仕事や作業が不得手(ふえて)で上手(うま)くできない人もいるでしょう。誰でも得手不得手があります。できないことを叱られたり、できないことで切り捨てられたりしたならば、皆「何時(いつ)自分が・・、明日は我が身か」と不安になり、仕事への意欲が低下してしまいます。

 できないことは、優しく叮嚀(ていねい)に教えてあげれば良いのです。教えられてできるようになったら、それは大きな喜びになりますし、皆も、自分ができないことも教えてもらえるから大丈夫だ、と安心して頑張れます。

 この二つのことによって仕事は捗(はかど)っていきますね。

 でも、何より大切なのは、自分を律することですよ。

 

☆ 補足の独言

 この章は、一つ前の十九章「直(なお)きを挙(あ)げて諸(これ)を枉(まが)れるに錯(お)く」の具体例ととることができます。