3 八佾第三 6

Last-modified: Tue, 20 Jul 2021 11:35:50 JST (1018d)
Top > 3 八佾第三 6

☆ 八佾第三 六章

 

 季氏旅於泰山 子謂冉有曰 女弗能救與 對曰 不能 子曰 嗚呼 曾謂泰山不如林放乎

 

 季氏(きし)、泰山(たいざん)に旅(やままつり)す。子、冉有(ぜんいう)に謂(い)ひて曰(いは)く、女(なんじ)救(すく)ふこと能(あた)はざるか。対(こた)へて曰く、能はず。子曰く、嗚呼(ああ)、曽(すなは)ち泰山(たいざん)は林放(りんぽう)に如(し)かずと謂(おも)へるか。

 

☆ 意訳 (心理屋の勝手解釈)

 魯公の臣下である季康子(きこうし)が急に、天子(周の王様)か魯公(魯の王様)しかしてはならない泰山(たいざん)の山神様をお祭りする祭祀(さいし)を勝手に執(と)り行(おこな)うことで、天子や君主を蔑(ないがし)ろにする僭上(せんじょう)の罪なる謀反(むほん)の意を表す重罪を犯そうとしていました。

 先生はそれを心配して、季孫家の家老をしていた弟子の冉有(ぜんゆう)に訊(たず)ねて言われました。冉有は特に政治手腕の優れた優秀な弟子なので、先生の要求もどうしても大きなものになってしまいます。

 貴方(あなた)は家老の身でありながら、主人である季康子の暴挙を止(と)めて大罪を犯さないように救ってあげることはできないのですか。

 (気の毒な)冉求は、身の縮(ちぢ)む思いで脂汗(あぶらあせ)を流しながら、呻(うめ)くように言いました。

 申し訳ありません。できるだけはやってみたのですが・・・私には無理でした。

 それを聞いた先生は、冉求に負けないくらい辛(つら)そうに言われました。先生は親しい冉求に対して精一杯の皮肉を言って、この絶望的な歎きの気持を発散させるしかなかったのです。

 ああ、何と恐ろしいことよ。この前、林放(りんぽう)という男が訊ねてきたが、礼の本質を理解できる中々の人物でしたよ。しかし何と言っても彼は一介の人間に過ぎない。私と同じです。それに対して、泰山は周王朝の中心になる天下一の偉大な山です。礼に於いてはこの山の山神様以上に精通しているお方はおられないと思っていましたが、あなた方は、この偉大な山神様よりも唯の人間に過ぎない林放の方が上だと言うのですね。・・・ああ、いや済まん済まん。つい愚痴を言ってしまいましたねえ。

 先生がふと気がつくと、冉求は蟻よりも小さくなっていました。

 
 
 

☆ 補足の独言

 八佾(はちいつ)や雍(よう)の事件は、未(ま)だ家(うち)の中での出来事です。しかし泰山への山祭り行きは、非礼と謀反の意を天下に知らしめすものです。傲岸不遜(ごうがんふそん)も甚(はなは)だしい。孔子は何としてでも止(と)めたかったのでしょうね。

 孔子も冉求もどんなに辛かったことでしょう。