4 里仁第四 12

Last-modified: Wed, 15 Sep 2021 10:04:59 JST (961d)
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☆ 里仁第四 十二章

 

 子曰 放於利而行 多怨

 

 子曰く、利に放(よ)りて行へば、怨(うらみ)多(おほ)し。

 

☆ 意訳 (心理屋の勝手解釈)

 先生が言われました。

 利益とか名誉とか、自分のことばかり考えて行動していると、それによって利益を奪われたり地位を奪われたりした人から次々と恨みを買うことになりますよ。

 自分本位の行動は、利益にしても名誉にしても、得たものは相手から奪ったものなのです。奪われた相手は、当然奪った者を憎みます。これが利によって行われることの必然的な結果なのです。

 君子は皆の喜びを自己の利益に優先させます。そのような相手のための行動だと、相手は喜びます。こちらは相手のためにしたことが報われる訳ですから、矢張り当然喜びます。このように共に喜べる行いは、利からは決して出てきません。利から出てくるのは怨みである、と心得ていて下さい。

 

☆ 補足の独言

 「利」という字は「禾(か・いね)」と「刀(かたな)」より成る字で、この字の左辺を主体として、穀物を鎌で刈(か)り取って収益を得る、という意味になるのだそうです。右辺からは、鎌の切れ味から、鋭いという意味になり、頭が切れる、賢い、という意味も出てきます。

 少し穿(うが)った見方のように思うのですが、「利(り)に放(はな)ちて行へば、怨多し」と読めば、「利発な才能を、相手への配慮なく思いのまま自由に発揮していると、相手の劣等感を刺激して嫉妬(しっと)を買い、偉(えら)い目に遭(あ)うぞ。能ある鷹(たか)は何とやらと言うであろう」という忠告にとっても面白いかも。でも孔子の言葉らしくはなくなるように思いますが、謙虚(けんきょ)謙譲(けんじょう)の大切さを説いているのだ、と理解できます。