4 里仁第四 14

Last-modified: Mon, 20 Sep 2021 18:06:11 JST (956d)
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☆ 里仁第四 十四章

 

 子曰 不患無位 患所以立 不患莫己知 求爲可知也

 

 子曰く、位(くらゐ)無きを患(うれ)へずして、立つ所以(ゆゑん)を患ふ。己(おのれ)を知る莫(な)きを患へずして、知らる可きを為(な)さんことを求む。

 

☆ 意訳 (心理屋の勝手解釈)
 先生が言われました。
 人は出世ができないと惨めな気持ちになって歎き悔やむことになりがちです。が、そんなことでは成長できません。出世できないのは自分のことを評価しない上司や相手の所為(せい)と考えてはいけません。その原因は、未だ自分にはその人にも認めさせるだけの実力がついていないからだ、と考えなければなりません。
 それと、自分のことを他人(ひと)が知ってくれない、自分の力を認めてくれない、と言って嘆くのも、同じ間違いですね。嘆いていぢけて努力を怠(おこた)るのではなく、その人達が認めて評価せざるを得なくなるような実績を上げるように自分に言い聞かせて、より一層の努力をすれば善いことです。
 呉々も勘違いしないで欲しいのですが、そうすれば必ず地位や名声が手に入る、ということではありません。地位や名声を求めて巧くいっても、それは見てくれだけの、実力の伴わない虚しいものでしかありません。化けの皮は孰(いづ)れ剥(は)がれます。大切なのは自分を磨(みが)くこと、実力を高め魂を鍛(きた)えることです。

 

☆ 補足の独言
 一見するとこの章は、出世をし名声を博(はく)するためには、他人の所為にせず確(しっか)りと自省して実力を高める努力を怠らないようにしなさい、という戒(いまし)めの言葉のようにもとれます。しかし、孔子は決してそのような、個人の利益を目的とした合理的精神の持ち主ではありません。孔子の合理精神は、皆が喜んで明るく暮らせる世の中を作る、という目的のためのものです。そのためには、個人の欲望は二の次に置いて、精神面の自己成長を一番に考える、ということが必要になります。そういう視点からの訳を試みてみました。