5 公冶長第五 9

Last-modified: Wed, 16 Feb 2022 19:56:55 JST (807d)
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☆ 公冶長第五 九章

 

 子謂子貢曰 女與回也孰愈 對曰 賜也何敢望回 回也聞一以知十 賜也聞一以知二 子曰 弗如也 吾與女弗如也

 

子、子貢(しこう)に謂ひて曰く、女(なんじ)と回(くわい)とは孰(いづ)れか愈(まさ)れる。対(こた)へて曰く、賜(し)や、何ぞ敢(あへ)て回を望(のぞ)まん。回や一(いち)を聞いて以(もっ)て十(じふ)を知る。賜や一を聞いて以て二を知る。子曰く、如(し)かざるなり。吾と女と如かざるなり。

 

☆ 意訳 (心理屋の勝手解釈)

或る時先生は、何か思うところがあったようで、突然子貢(しこう)に対して、こんな意味深(いみしん)な、言わずもがなの質問をされました。

 賜(し)ぃちゃん、貴方(あなた)は回(かい)ちゃん(顔淵・顔回)と自分とを比べて、どちらが優れている、と思いますか。

 思いも寄らない質問を唐突にされた子貢は吃驚(びっくり)して、質問の意味を考える暇(いとま)もなく慌(あわ)てて正直に答えました。

 先生、そりゃあ無茶ですよ。回ちゃんと私では余りに差があり過ぎて比べようもありません。回ちゃんは、一言聴いただけで、先生の言わんとすることを総て本質から理解しています。私はと言ったら、先生も言ってくださいましたが、一を聴いて二を知るのみです。(学而第一、十五章)

 子貢の答えを聞いて、先生は言われました。

 本当にその通りですね。私は熟々(つくづく)嬉しいのですよ。回ちゃんの仁の実践の素晴らしさは、私も適(かな)いません。何を変(おか)しなことを質問するのか、と思ったでしょうが、この喜びを共に語り合えるのは、賜ぃちゃん、貴方しかいないのですよ。驚かせて悪かったけれど、一緒に仁に励(はげ)んでいきましょう。

 

☆ 補足の独言

 この章からは、顔淵(がんえん)と子貢、という二人の望ましい弟子達に恵まれた孔子の、沁々(しみじみ)とした喜びが伝わってきます。
 「吾も(回に)如かず」と冷静に謙虚に言える孔子は、正(まさ)に仁の人ですね。